霊園ガイド特集記事|六月書房

霊園ガイドNo.80<発行日:2013年2月15日>より再録

現代お墓事情 ~小型化する墓石と失敗しない建墓~

現在、日本では急速な高齢化と同時に少子化が進み、核家族の増加など、社会構造に大きな変化が起きています。それと同時に、人々のお墓に対する意識も変わってきました。

これまでのように、「親のために立派なお墓を建てたい」「親戚の手前、恥ずかしくない墓石を建立しなければ……」といった感情は希薄になり、「お墓にはあまりお金をかけたくない」「お金が無いから墓石は小さくても良い」といった、堅実な選択をする方が増えています。業界団体によって発表された墓石の平均購入価格も、昨年度は調査開始以来、過去最低の数字となりました。核家族化が進んだことにより、従来のように一家(一族)単位で特定の宗教・宗派に帰属する意識が低くなったのも、お墓を大事にしないという考え方につながっています。

首都圏で開発が進む民営霊園では、そうした消費者サイドのニーズに沿うかたちで、販売する墓所の区画面積を小型化する傾向が強くなっています。墓所が小さくなり、お墓に使用する石材の量が減少したことによって、石材店による墓石建立費(墓石代・工事費・加工費など)の低価格化も進みました。その結果、首都圏の霊園には、以前では考えられなかったような小型の墓石が多く建ち並ぶようになっています。

しかし、お墓は単なる遺骨の収蔵場所ではありません。自分の親や先祖に感謝し、語らい、拝むための大切なものです。何十年も受け継いでいくための、かけがえのない家族のモニュメントです。そんな何物にも代えがたいお墓が、あまりにも小さく、貧弱なものだったとしたら、さみしい気持ちになるのではないでしょうか。

今回の特集では、首都圏で増え続ける小型墓石(墓所)の現状をレポートすると同時に、お墓の持つ意味について考えます。

墓地イメージ写真

先日、首都圏で発行されている新聞に、次のような記事が掲載されました。一部を以下に抜粋してみます。

『40cm四方の区画を頭に思い描いてほしい。座布団より小さい。今、都市部で売られている墓地の区画だ。これまで都心での区画の標準は90cm四方と いわれているから、面積は約5分の1のサイズだ。墓石もミニチュアで、墓地には肩を寄せ合うように小さな墓が並ぶ。(後略)』

これは平成23年の秋のお彼岸が過ぎた頃に、東京新聞紙上に掲載された記事です。墓所の現在から少子化の影響について考察する内容ですが、記者が小さすぎる墓所の風景に衝撃を受けている様子が伺えます。

全国の墓石の平均購入価格ここ取り上げられているのは、都内の寺院の墓地が「宗旨・宗派自由の墓地」として販売されたケースで、純然たる民営霊園ではありませんが、この墓地の広告を見ると区画面積0.16m2(40cm×40cm)の墓所の場合、墓所使用料と墓石建立費の合計が67万円と明記されています。

その他にも、東京都М市の霊園で「0.4m2・総額68.9万円」、神奈川県F市では「0.56m2・総額69.68万円」、千葉県М市の霊園では「0.6m2・総額71.4万円」など、建墓費用の総額が安価であることを大々的に宣伝する霊園は、数多く存在します。東京都世田谷区では、0.1m2(間口20cm×奥行50cm)という超小型の墓所も登場しました。

全国の石材店を対象にしたアンケート調査によると、平成24年の墓石の平均購入価格は162万円。関東の1都3県(東京・千葉・埼玉・神奈川)では164.4万円。これらと比較しても、先ほど紹介した建墓費用の総額が、いかに廉価なものであるかが分かります。

●新規霊園の墓所

首都圏では昨年もいくつかの霊園が、新たにオープンしました。下部の表に、それらの新規霊園で販売されている最少区画の墓所面積と、墓所使用料を記しました。

条例によって一区画の面積が1.5m2以上であることが定められている千葉県(一部地域を除く)以外は、全ての霊園で1.0m2以下の墓所が用意され、その中のいくつかでは、建墓費用の総額を100万円未満に抑えられることを謳うチラシが配られたり、広告が展開されたりしました。すでに最少区画が完売している霊園もあります。

本誌『霊園ガイド』は昭和61年(1986)の創刊で、今年で27年目を迎えます。過去の資料をあたったところ、20年以上前の首都圏の民営霊園では、3m2の区画はごく一般的なものでした。15年ほど前には2~3m2の区画が中心になり、7~8年前には1.5m2前後のものが多くなりました。1m2、もしくは、1m2未満の墓所がこれほど目立つようになったのは近年のことです。

平成24年に開園した主な民営霊園の最小区画と墓所使用料

●チラシに載せるための“サービス区画”

なぜ、これほどまでにお墓は小さく、そして、安価になっているのでしょうか。霊園の取材中、現地の案内所に待機していた石材店の販売担当者にそのことを質問すると、次のような答えが返ってきました。

「とにかく、チラシに安く買えるお墓の情報を載せないと、お客様が見学にも来てくれない。お墓は電話やインターネットで注文できるものではなく、実際に霊園に足を運んでもらって対面で商談をしない限り、絶対に売れない。少しでも多くのお客様を呼ぶためには、このようなサービス区画を用意せざるを得ないのです」(都内に本社がある石材店の営業担当者)

この話にもあるように、お墓は典型的な対面販売型の商品です。郊外に造成された墓地にお墓を求める人々が殺到した、昭和30年代後半から50年代前半にかけての霊園ブームの頃や、お墓に関する情報が広く知られていなかった時代とは違い、現在は実際に霊園へ足を運ばなくても、インターネットでお墓について検索すれば、誰でも簡単にさまざまな霊園を比較検討することができますし、本誌の「民営霊園案内」を読んでいただければ、首都圏の霊園の詳細な情報を知ることができます。

そうした状況の中で、各霊園は少しでも多くの見学者を呼び込むため、まるでスーパーマーケットの“本日の目玉商品”のように、廉価な区画と安価な墓石を用意し、「限定○区画!」「○月○日まで!」などの煽り文句を添えてチラシや広告に掲載しています。

「サービス区画は、お客様を霊園に呼ぶためのもの。はっきり言って利幅は薄いので、見学に来たお客様には、まずはもっと広い区画をおすすめします。それでも、予算などの関係で小さい区画が良いとおっしゃる方には、誠意を持って対応させていただいています」(前出の営業担当者)

もちろん、お墓が安く手に入るのであれば、それは消費者にとっては喜ばしいことに違いありません。本誌編集部にも、読者の方から「なるべく低価格で購入できるお墓をさがしているのだが……」といった内容の問い合わせが多く寄せられます。しかし、価格だけにこだわってお墓を選んでしまうのは、正しいことなのでしょうか。

何もお墓は高価でなければならないというわけではありませんが、廉価なお墓の購入を検討する際は、安いものにはそれだけの理由があるということを一考するべきでしょう。

普通、「お墓を買う」と言いますが、お墓の場合は住宅用の土地のように、墓地となる土地を買い取ることはできません。

この場合の「買う」とは、墓地の経営主体との間で「お墓を建てるための土地を永久に使用する権利を得る」ことを意味します。この墓地を使用する権利を「永代使用権」と呼び、その権利を得るために支払う対価を「墓所使用料(永代使用料)」といいます。墓所使用料は墓所の広さに比例して設定されるので、区画面積が小さければ小さいほど、金額も下がります。

キャンペーン期間のチラシつまり、建墓費用の総額が極端に安い墓所では、まず区画面積そのものが小さいことが、第一の理由として挙げられます。さらに、区画面積が小さければ、お墓に使用する石材の量も少なくなります。その点でも、建墓に必要な費用が引き下げられるわけです。

また、いわゆるサービス区画の場合、完成墓石の写真のそばに、小さい文字で「○○石を使用した場合」等と記されていることがありますが、これは使用することのできる石材の種類が限られているケースです。ほとんどは、中国産の白系やピンク系の御影石が指定されています。もし、黒御影石や、国産の石材を使用した場合は、価格がサービスの枠内におさまらず、予算をオーバーしてしまいます。

次に、デザインの自由度が非常に低いという特徴があります。こうした区画では、墓石のデザインが決められており、思いを込めたオリジナルのお墓を建てることはできません。地上カロート(納骨棺)タイプの洋型墓石が多いのですが、一部では和型墓石もあります。墓碑に刻む文字を工夫したり、若干の彫刻をあしらうことはできるようですが、他のお墓との大きな差別化はできないでしょう。

デザインが決まっているため、サービス区画には全く同じ形の墓石が、まるで新興住宅地の建て売り住宅のように、狭い範囲に密集して建ち並ぶことになります。墓所を購入する時にはまだ他にお墓が建っていなくても、数ヶ月後に現出するそうした墓所のたたずまいのことまでよく考えておくべきです。

そうした区画は、通常、霊園の最も販売しにくい区画に設けられます。霊園の入り口から一番遠い場所であったり、日当たりが悪かったり、駐車場から大変離れた場所であったりします。都内のある霊園では、急な階段を使わなければ行くことができない低い土地に、チラシで「お買い得!」と書かれた「おすすめ区画」が設定されていました。

●さみしいお墓

記者が取材で埼玉県のある霊園を訪れた際、管理事務所の所長にお話を伺うことができました。その霊園は埼玉を代表する大型霊園で、記者が訪問した時は、ちょうど集客の目玉として造成した0.6m2の墓所(約100区画)が完売していて、ほぼ全ての区画に墓石が建立されていました。

そこは霊園の最も奥まった場所で、墓域を取り囲む森と境を接しています。落ち葉も多く、午後になると日陰になってしまいます。そうした土地に、コピーしたように同じ形の墓石が、隙間なく建ち並んでいました。記者を案内してくれた所長は「石材店さんからの勧めもあって、この区画を作ったんですが……」と言った後で、
「ここを見るたびに、悲しくなるんですよね」
と、話してくれました。

言うまでもなく、所長はそれらのお墓をお参りするわけではありません。ただ、小さくて画一的な墓石が並ぶ、狭苦しい印象の墓域を眺めての感想だったのですが、強く印象に残る言葉でした。

お墓は他の商品とは違い、親や先祖を敬い、次代に心をつなげていくための大切なものです。そして、お墓は家と同じく、一度建てたら容易にやり直すことはできません。自分にとって大切な人が眠る場所を、「生活が豊かではないから」「お金に余裕がないから」といった理由で、小さく簡素なものにしてしまった場合、その後のお墓参りでは、とてもさみしい気持ちを抱くことになるでしょう。

画一的な墓石がならぶ、0.4㎡の“サービス区画”建墓を経験された方に、当時の体験談を伺うインタビューでお話を聞いた方の中にも、余裕がなかったために墓石を小さなものにしてしまったことを悔いていると話してくれた方がいらっしゃいました。その方は、会社の経営者であったご主人を病気で亡くされ、建墓の際はご主人が遺した会社を継いで、経営を安定させるために懸命にがんばっておられる時期で、将来の見通しも立たない中、お墓に予算を割くことができなかったそうです。

しかしながら、会社の経営もなんとか軌道に乗った頃に「もっと大きなお墓を建ててあげれば良かった」という気持ちが湧き上がってきたということです。納骨の時はもちろん、年回忌法要などの仏事の度に、心の中でご主人に謝っておられるということでした。

お墓を建てる費用は、決して安いものではありません。もし、費用をまとめて捻出することが難しければ、分割で支払う「建墓ローン」を利用することもできます。建墓ローンについては、後のページで詳しく説明します。

●なぜお墓は小型化したのか?

安価な小型墓所が増加している理由は、経済的な事情と少子化の影響が大きいようです。一向に上向かない景気動向の中、お墓にお金をかける余裕がない人々が増え、そうしたニーズに応えるかたちで、墓所の区画面積は小型化してきました。また、少子化と核家族化の影響により、一世帯当たりの家族の人数が少なくなって、広い納骨スペースを確保する必要がなくなったことも、墓所の小型化を後押ししました。

骨壷が多く収容できるように工夫された沖縄県の墓石石材店の担当者にお話を聞いたところ、首都圏の民営霊園のお墓では、一般的な7寸の骨壷(高さ25.5cm前後×直径22.0 cm前後)を4つ収蔵する機能を備えていれば十分であると考えられているそうです。先ほど、小型墓所の一例として紹介した東京都М市の0.4m2の墓所も、やはり地上カロートに骨壷が4つまで納骨できるように設計されていました。

ちなみに、先祖を大切にする風習のある地方では、そのようなお墓では建墓者の要望に応えられないため、まだこうした動きは出てきていません。沖縄県の霊園では、現代的なデザインの洋型墓石でも、カロートには10以上の骨壷が収蔵できるよう、内部を三段式にする等の工夫が施されています。

一般家庭の家族累計の割合の推移(全国。平成7~22年)

●お墓の建て替えは困難な作業

万一、お墓を立派なものに建て替えたいと考えた場合、それはとても困難な作業となります。

まず、新しい墓地を準備して墓石を建立すると同時に、元のお墓を解体し、撤去します。墓地は更地に戻し、墓地の管理者に返還します。納骨されていた骨壷はカロートから取り出して、新しいお墓へと移さなければなりません。開眼法要を行なうとともに、既存墓地では御魂抜きの法要も必要になってくるでしょう。このように、お墓を別の場所に移すことを「改葬」と呼びます。改葬の手続きについては、この特集の最後で詳しく解説します。

こうした作業は非常に煩雑であると同時に、普通にお墓を建てることに比べて、法要や古い墓石の撤去など、余計な費用がかさみます。一度建墓を経験した後のこれらの出費は、大変な負担となることでしょう。また、一旦お墓に安置した骨壷を動かさなければならないということも、家族やご先祖の静かな眠りを妨げることになるという点で、心理的な重荷になります。

お墓づくりでこのような後悔をしないためにも、少々予算的にきつくても、建墓の際に頑張っておくことが肝心です。

先ほども述べたようにお墓は家族の絆を代々つないでいくための、かけがえのないものです。少子化・核家族化が進む社会であっても、先祖がいたからこそ私達の命がつながっていることを忘れてはいけません。

大切な人を亡くして、お墓を建てなければならなくなった時、暮らしに余裕がないために、あまりお金をかけたくないと考え、安易な気持ちで、小型で、個性が無く、貧弱な墓石を選択してしまったとしたら、後になって悔いを残すことにはならないでしょうか。納骨、年回忌法要などの仏事はもちろん、お彼岸やお盆にお墓参りに訪れる度に、さみしい気持ちを抱くことにはならないでしょうか。お墓に手を合わせながら、心の中で故人に詫びなければならないとしたら、それはとても悲しいことです。

これは記者の主観でもありますが、後悔しないためには、やはり1m2以上の区画にお墓を建立するのが望ましいかと思います。1m2の墓所は、間口1m×奥行1mで区画割りされていることが多く、間口が1m以上確保されていれば、立派な墓石を建立することができます。

さらに、1m2以上の墓所であれば、霊園の規則の範囲内で、オリジナルのデザイン墓石を建立したり、文字や彫刻に意匠を凝らすことが可能なので、故人のために思いのこもったお墓に仕上げることができます。

供養の心を表現した、満足できるお墓を建てることができれば、その後の仏事やお墓参りは、きっと気持ちの良いものとなるに違いありません。大事な人を、心をこめて祀ることができた者は、人間としての幸福にも恵まれるのではないでしょうか。

●都市部の霊園と郊外の霊園

建墓費用では、永代使用権を得るために支払う墓所使用料が大きな割合を占めますが、これは地価と同様に、地域によってかなりの差があります。同じ1m2の墓所でも、都市部と郊外では、墓所使用料に数倍の開きがあります。

東京都の場合、八王子市の上川霊園(S47開設)は、1m2の区画の墓所使用料は16.8万円ですが、23区内のある民営霊園(H21開設)では、同じ面積の墓所使用料は220万円。およそ13倍の価格差になります。

近年は、お墓は交通の便が良く、自宅から近い都市部に持ちたいというニーズが高まっており、駅から徒歩圏内の“駅近”の霊園や、住宅街の中に造成された霊園のオープンが相次いでいます。それらの霊園は、一定の支持を得ているようです。

しかし、便利な場所であるほど地価は高くなるので、墓所使用料も上昇します。墓所使用料を多く支払えば、当然、墓石に割ける予算は減り、お墓は小さく簡素なものにならざるを得ません。不動産物件の事情と同じ理屈です。

お墓参りの平均回数(1年間)では、お墓が近くにあるのは、本当に良いことなのでしょうか。確かに、家から近い場所にお墓があれば、お墓参りには便利かもしれません。ですが、お墓参りというものは毎日行くものではなく、お彼岸やお盆、故人の祥月命日など、節目に行なうことがほとんどです。ある石材店のアンケートでは、お墓参りの平均回数は、年2.8回という調査結果が出ています。お墓は非日常的なもので、近くにあっても頻繁に訪れることが実は少ないのです。

年に数度のことであれば、便利な場所に開発された霊園にこだわらず、家からの距離が多少離れても、郊外の霊園への建墓を検討してみてはいかがでしょうか。郊外であれば墓所使用料が低く抑えられ、その分、大きく立派なお墓を建てることができます。墓石のデザインや、石種にもこだわることができるでしょう。

お墓が郊外にあることで、お参りへ行くための手間が増えることになったとしても、故人やご先祖のために時間をかけて行き、大切な人を想うことは、それ自体が供養の気持ちの表れであり、尊い行ないなのです。

●霊園開設が鈍る都市部

墓地等の経営の許可に関する条例が改正されたことにより、平成24年4月から霊園開設の許認可の権限が、都道府県から市町村に移譲された影響で、現在、特に都市部で霊園の開設が難しい状況になっています。

これまでに比べて、霊園建設予定地の周辺住民の意向が、行政にダイレクトに届くようになったため、なかなか霊園開設の許認可が下りない事例が多くなっています。実際に、東京都の世田谷区・羽村市・府中市・東大和市、千葉県の松戸市などでは、霊園開発に反対する住民と業者の間でトラブルが多発し、新聞報道もされました。

霊園ができると周辺の地価が下がる、生活道路が渋滞する、線香の匂いや煙が蔓延する、といった点が、反対の主な理由となっているようです。行政サイドとしても、住民による強硬な反対があれば、容易に建設許可が出せず、霊園建設予定地が長い間塩漬けになっているケースも見受けられます。改正後の条例では、霊園の経営主体となる宗教法人についても、霊園建設予定地での宗教活動の実績があることなどの条件が厳しく定められており、今後、首都圏の都市部では、これまでのようなペースでは霊園の開設は進まないはずです。そのために、市街地に近い便利な場所でお墓をさがしている方にとっては、理想の墓所を見つけることが困難な状況が生まれるかもしれません。

しかし、郊外に目を向ければ、霊園ブームの頃に開設した郊外型霊園がたくさん存在し、それらはまだ墓所に余裕があるので、多くの区画の中から自分に合ったものを見つけることができるはずです。「お墓は近くに!」「お参りに便利な場所が良い!」といった一方的な考えではなく、自分の考え方に合ったお墓を、建立した後のことも考えた上で、じっくりと検討されるのが良いでしょう。

  • 東京霊園(S40年開園。東京都八王子市)

  • 西多摩霊園(S41年開園。東京都あきる野市)

  • 八王子 上川霊園(S47年開園。東京都八王子市)

  • 成田メモリアルパーク(S61年開園。千葉県成田市)

  • 御宿霊園(S55年開園。千葉県夷隅郡)

  • 所沢聖地霊園(S49年開園。埼玉県所沢市)

  • 地産霊園(S42年開園。埼玉県入間郡)

  • 春秋苑(S33年開苑。神奈川県川崎市)

  • 鎌倉霊園(S40年開園。神奈川県鎌倉市)

  • 相模メモリアルパーク(S38年開園。神奈川県愛甲郡)

  • 牛久浄苑(H3年開園。茨城県牛久市)

  • 冨士霊園(S39年開園。静岡県沼津市)

●お墓は分割払いもできる

都市部であれ郊外であれ、1m2の墓所にお墓を建てるには、墓石の形、使用する石材、墓所の種類(ゆとり墓地・芝生墓地などは、墓石がやや小さくなる)などによって違いがありますが、概ね100~200万円の費用が必要になります。墓所の面積が広ければ、建墓費用はそれより高額になる場合もあります。

お墓を購入する際は、石材店に墓石の施工工事を依頼することになります。建墓費用を一括で支払うのが困難な方のために、多くの霊園や石材店では「建墓ローン」が用意されているので、お金がすぐに用意できない時には、ローンの利用を検討してみるのも、後悔しない建墓のための有効な手段です。

建墓ローンの一例建墓ローンの対象には、墓石代・施工工事費・墓所使用料が含まれ、返済プランに合わせて支払回数や、ボーナス払いの有無などを設定することができます。月々の支払い金額を1万円未満に抑えることのできる、長期返済プランを選べるところも多いので、ローンの利用を考える際は、支払い回数など、プランの詳細な内容についても問い合わせてみるべきです。石材店によっては、各種クレジットガードが利用できる場合もあります。(霊園によっては、墓所使用料がローンの対象に含まれないこともあります)

万一、ローンの支払い期間中に契約者が亡くなった時は、ローンは契約者の財産を相続する、法定相続人が引き継ぐことになります。団体信用生命保険(団信)が付いたローンであれば、契約者が死亡した場合には、生命保険会社がローン残高を支払います。

お墓を建てるには、まず墓地を決めるのが一般的です。読者の中には、すでに霊園見学を経験された方もいらっしゃるかもしれません。墓地には大きく分けて、公営霊園・民営霊園・寺院墓地の3タイプがあります。墓地によって、墓所使用料や利用規則にさまざまな違いがあります。本誌191ページの「お墓さがし基本講座」では、それぞれの特徴などについて詳しく解説していますので、参考にしてください。

また、良い建墓を実現するためには、良い石材店を選ぶことがたいへん重要です。

同じお墓を建てるなら、少しでも安く建ててくれる石材店にしたいと考えるのが人情かもしれません。しかし、石材店に依頼するのは墓石の施工工事だけではありません。お墓を良い状態で長く維持していくためには、メンテナンスや法要のこと、時にはお寺との付き合い方まで、墓石建立後も何かとアドバイスをしてもらう必要があります。

最近では石材店の数が増え、中には販売の際に強引なセールスを展開する業者や、墓石建立後のアフターサービスを行わない、無責任な石材店もあるといいます。長く付き合っていける、良い石材店をさがしましょう。

相談を重ねながら納得できるお墓を建て、建立後も代々付き合っていくためには、石材店の担当者の人柄や雰囲気は重要な要素です。優秀な石材店であれば、社員に対する教育もしっかりと行なっているはずだからです。

石材店の情報はインターネットなどからたくさん得ることができますが、実際に店舗や霊園に足を運んで、自分の目で確かめてみることが大切です。建墓技術は確かなのか、仕事に自信を持っているのか、石材や墓石についてよく勉強しているのかなど、話してみて伝わってくることも多いでしょう。

  • 長年の実績がある
    長年の実績は、施主から信頼を得ていることの証拠です。
  • よく話を聞き、適切なアドバイスをしてくれる
    施主の考えや希望に丁寧に対処してくれなければ、満足できるお墓は出来上がりません。良好な関係を築くのも難しくなります。
  • お墓について詳しい知識を有している
    石材の特徴や墓石の形、加工、宗教的なことに専門的な知識があれば、安心して相談することができます。
  • 見積もりが明確である
    価格が不透明な石材店は信頼できません。費用の内訳が明示され、説明が分かりやすい店を選びましょう。
  • 正式な契約書を交わす
    納期はいつか、どんな仕上がりになるかなど、工事に入る際にはしっかりとした契約書を取り交わしましょう。
  • アフターケアがしっかりしている
    アフターサービスの内容や度合いは重要な要素です。しっかりと確認しましょう。

●指定石材店制度について

民営霊園では必ずといっていいほど、お墓を販売・施工できる石材店が霊園によって指定されています。これを指定石材店制度と呼びます。

霊園の規模にもよりますが、多くの民営霊園には、10~20社程度の石材店が参画しています。墓地を決めてから石材店をさがす場合は、指定石材店の中から選ばなければなりません。しかし、それらの業者は、それぞれ規模も社歴も技術の高さもまちまちです。優秀な石材店に依頼できればラッキーですが、悪質な業者が担当になってしまった場合でも、同じ霊園の中で担当の石材店を変更することは、ほぼ不可能です。

これは千葉県の霊園を見学された女性のケースですが、その方は指定石材店制度についての知識がないまま霊園を訪れ、たまたま見学者を案内する順番だった石材店が担当になり、そこを通してお墓を建てることになりました。ところが、この業者はいい加減で、お墓についての打ち合わせには遅刻する、デザインの変更を求めても応じないなど、不誠実な対応を繰り返したそうです。

霊園に参画している石材店の中に、全国規模で事業を展開している、しっかりした業者があることを知った女性は、霊園に担当石材店の変更を申し出たそうですが、霊園側から「変更は認められない。もし担当石材店が気に入らなければ、他の霊園をさがして」と言われ、呆然としてしまったということでした。結局、女性はこの霊園にお墓を建てることを諦めざるを得ませんでした。

同様に、もし意中の石材店がある場合でも、霊園に指定されていない業者にお墓の施工を頼むことはできません。もし、ぜひとも依頼したい業者があるなら、まず石材店に相談して、石材店から墓地を紹介してもらうと良いでしょう。

●改葬について

「生まれ故郷に先祖代々のお墓があるけれど、もう墓を守る者もいないし、遠くてお墓参りが大変なので、いま暮らしている土地の近くに移したい」といった理由で、お墓を移転することがあります。このように、遺骨を古いお墓から新しいお墓に移して埋葬しなおすことを、改葬といいます。

お墓を改葬するには、既存のお墓のある市町村の役所で、改葬の許可を得なければなりません。そのためには、遺骨を移すための新しい墓地が決まっていることが必要です。古い墓地に埋葬されている遺骨が全部収蔵できるか、といったことを慎重に検討して、墓地をさがします。

既存の墓地の管理者には、お墓を移転する旨を申し出て、埋葬証明書の発行を依頼します。この時に注意したいのは、お墓を移されることは墓地の管理者にとっては、望ましいことではないという点です。特にそれが寺院墓地だった場合、寺にとっては檀家が減ってしまうことになるので、快く思われません。住職には誠意を持って事情を話しておきましょう。

また、既存の墓地がある地域に親戚がいる場合は、その後の付き合いにも影響が出ることがあります。そうした人達にも、事前にきちんと話をして、承諾を得ることが大切です。

  • ①お墓(遺骨)の移転先の墓地・納骨堂を決める。
  • ②移転先の墓地の管理者から『受入証明書』を発行してもらう。
  • ③移転元の墓地の管理者から『埋葬証明書』を発行してもらう。
  • ④移転元の墓地が所属する市区町村の役場に、『改葬届』を提出。『改葬許可証』を受け取る。
  • ⑤移転元の墓地の管理者に『改葬許可証』を提示し、遺骨を取り出す。
         <魂抜きの閉眼法要の後、墓所の墓石・外柵を撤去。原状回復の義務>
  • ⑥移転先の墓地の管理者に『改葬許可証』を提示し、納骨。開眼法要を行なう。

近年、お墓の大きさ(墓所の広さ)は、少しずつ小型化する傾向にあります。0.6m2・0.56m2といった小さな区画に、画一的な墓石がぴったりとくっつくように立ち並ぶ風景は、今では当たり前のものになりつつあります。

社会の構造変化と経済情勢に伴って、お墓も大きな変貌を遂げています。それはある意味では当たり前のことなのかもしれません。しかし、価格面だけにひかれて安易にそうした小型墓所を選択することはお薦めしません。記事中で紹介した女性が悔やむように、あとになって「もっと立派なお墓を建てれば良かった」と思っても、もう遅いからです。お墓は単なる遺骨の収蔵スペースではなく、供養の心を次代につないでいくための大切な場所です。親やご先祖、そして、今ある自分の命に感謝し、絆を確認するための掛け替えのないものです。

都市部の霊園に小さなお墓を建てるだけの予算があるなら、郊外の墓地にもっと大きなお墓を建てることができるでしょう。たとえ生活にあまり余裕がなくても、少しだけ頑張って、大切な人のために、心のこもった拝みたくなるお墓を建てることが大事です。お墓は建てたら終わりではなく、この先何十年も継いでいくものであるということを忘れないようにしなければなりません。そうして、満足できる建墓を実現した人は、何より大切な「供養の心」も、次代につないでいくことができるでしょう。

簡単にやり直しがきかない建墓という一大事業。この特集が、みなさまの建墓を真に納得できるものにするための一助となれば幸いです。


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