霊園ガイド特集記事|六月書房

霊園ガイドNo.77<発行日:2012年2月15日>より再録

お墓の最新事情 -納得できる建墓のために-

お墓を建てるという行ないは家を建てることと同様にほとんどの方が一生に一度しか経験しません。とても高額な買い物ですから、やり直しもききません。それだけに、事前の情報収集が大切になります。
本誌を手に取っておられるみなさまの中には、近々の建墓を考えておられる方も多いことでしょう。お墓の建立についてのノウハウを紹介した書籍やホームページはたくさんありますが、現在の霊園事情に則した最新の動向を反映したものは少ないように思われます。
ここで紹介する内容を、みなさまの建墓のためにお役立てください。

・大型霊園の時代

最新の情報を述べる前に、まず本誌で主に取り上げる「民営霊園」の成り立ちについてお話しします。それまで公営霊園(都立青山霊園のように、都道府県や市区町村などの地方自治体が運営・管理している墓地のこと)と寺院墓地しかなかった我が国に、初めて民間の開発による墓地が誕生したのは昭和33年。神奈川県川崎市の春秋苑が、日本で最初の民営霊園だと言われています。

昭和30年代後半になると高度経済成長期を迎え、都市部では人口が爆発的に増加しました。それとともに、墓地不足の問題が盛んに叫ばれるようになりました。自治体運営による公営霊園だけでは、都市部の墓地需要を十分に賄うことができなくなっていたのです。そこで、民間によって郊外に敷地面積数十万平方メートル、総区画数数万規模といった大型霊園が次々に開発されるようになりました。そして、それらの霊園で墓地の分譲がスタートすると、人々は競うように墓所を買い求めました。いわゆる“霊園ブーム”の到来です。昭和39年に開園した富士霊園(静岡県駿東郡。総区画数約7万)のスタッフは、
「当時は墓所を開放すると、まるで“蒸発するように”売れたものです」

と、話してくれました。

・建墓者ニーズの変化

霊園ブームは昭和50年代まで続きます。その頃になると、墓所を求める建墓者のニーズが、「もっとお参りしやすい場所に墓地がほしい」といった具合に変化してきました。郊外の霊園は自動車を所有していないとお墓参りに不便であることも多く、自宅から近い場所にお墓を求める動きが活発になってきたのです。

霊園や石材店もそうした声に応えるかたちで、都市部で中小規模の霊園開発を手掛けるようになりました。時代が平成に入ってすぐにバブル景気が終焉すると、上昇を続けていた地価は下落傾向となり、企業が所有していた遊休地が開発未着手のまま売りに出されたりして、以前であれば取得することが困難であったような好条件の土地が確保できるようになったことも、都市部での霊園開発を後押ししました。好景気で地価が高騰していた時には霊園を造成しても墓所使用料が高額になり過ぎ、とても採算が取れないと考えられていた土地が、霊園開発に適した用地となったのです。

この時、都心から離れて遠くにあるのが常識だった墓地が、「すぐ近くにあるもの」へと変化していったのです。そうした流れは現在まで続いており、今では霊園の規模に関わらず、公共交通機関でのアクセスが便利な霊園や、駅から徒歩でお参りできる“駅近”霊園が人気を得るようになっています。

墓地を購入する際に重視する項目(複数回答)・墓所の小型化とお墓の低額化

都心部に中小規模の霊園が開発されるようになると、霊園ブームで郊外に大型霊園が造成されるようになった頃に比べて、個々の墓所の区画面積は小さくなっていきました。
土地の値段が下がったとはいっても、条件の良い土地は当然郊外よりも地価は高く、墓所使用料が高額となってしまうため、区画面積を小さくすることで墓石購入費の総額(墓所使用料+墓石工事費)を抑えたのです。
この墓所の小型化の傾向は今では一層進行していて、郊外でも0.6m2・0.8m2といった1.0m2未満の墓所を販売している霊園もあります。
このように墓所がますます小型化しているのは、お墓の購入費を低く抑えたいという消費者のニーズの変化が大きく影響しています。

都内に本社を構える仏事関連総合サービスの(株)メモリアルアートの大野屋が、40~60代の男女518名を対象に行なったアンケート「お墓に関する意識調査」(表-1)によると、墓地を購入する際に重視する項目として「価格・維持費」がトップ、「自宅からの距離」がそれに次ぐ2位となっています。

また、「全国優良石材店の会」が加盟石材店で実際に墓石を購入した人を対象に行なった、「お墓の購入価格についての調査」(有効回答数3,002名。表-2)では、100万円から200万円という価格帯で建墓を行なう方が全体の47%を占め、最も多くなっています。
建墓費用の全国平均は165.2万円。これは調査開始以来、過去最低の数字です。
首都圏の1都3県(東京・千葉・埼玉・神奈川)に限ると169万円。ちなみに、本誌編集部でも平成17年に首都圏においてお墓の購入費についての調査を行なっていますが、その時の結果は平均価格203.9万円でした。
約7年間で首都圏のお墓の平均購入価格は30万円以上も下落しているのです。

平成22年の全国墓石購入価格このように、お墓を購入する時にはステイタスよりも価格重視で選びたいという消費者のニーズが高まった結果、霊園と石材店は消費者に目を向けてもらえるよう、廉価な商品をラインナップに加えるようになりました。そのため、現在のお墓は「小型化」「低額化」という流れの中にあります。この二つは相互に関連性があり、墓所が「小型」になったために、お墓の購入費用が「低額」になっているとも言えます。
墓所が小さければ区画面積に応じて発生する墓所使用料(永代使用料)を抑えることができますし、墓所が小さい分、お墓を建立するために必要な石材も少なくて済むので、購入費の総額を低くすることができるからです。
また、核家族化が進んだことにより、骨壷を納めるカロート(納骨棺)を広く確保する必要性が薄らいだことも、墓所の小型化を加速させました。

近年では自宅から近い都心に墓地を求める人には、霊園での建墓ではなく、駅前や街中にある納骨堂や永代供養墓を選択するという選択肢もあります。
遠く離れた故郷のお墓を自宅から近い場所へ引っ越しさせる(これを改葬と言います)例も増えています。この中で最近特に注目されている改葬については、後で詳しく述べます。

・首都圏の年間建墓総数は約55,000基

平成23年の首都圏の建墓総数近年の霊園事情の変化と建墓者の動向を探るため、本誌編集部が東京都内に本社を構える有力石材店の協力のもと独自に調査を行なったところ、昨年一年間に首都圏で建立された墓石の総数は、推計55,000基であることが分かりました。調査時期は平成23年12月で、この数字には民営霊園だけではなく、寺院墓地および公営霊園に建立された墓石も含まれています。その時点で墓石が完成していない「12月31日までに建墓工事完了後、引き渡し予定」の墓石も含まれます。全国の建墓総数の正確な統計はありませんが、調査に協力していただいた石材店の話を総合すると、首都圏の建墓総数は漸減傾向にあるようです。これは少子高齢化や景気停滞によ る所得の減少の影響に加え、過去の霊園ブームにより墓地が一定程度の充足を見たことも影響していると考えられます。

・墓所の飽和状態

平成23年に首都圏で開園した主な民営霊園そのような状況下にあっても、霊園開発は今も各地で活発に行なわれています。取材に応じてくれたある大手石材店の担当者は、「神奈川県の横浜地区など、地域によっては霊園が増えて墓所の飽和状態になっている」

と、話しています。そうした現状を理解していただくために作成したのが32頁の表-3で、これは昨年一年間に首都圏でオープンした主な民営霊園のリストです。その数は東京・千葉・埼玉・神奈川の1都3県だけで、合計25霊園。これはあくまでも本誌編集部が情報を把握しているものだけなので、それ以外のものを含めれば、ほかにも霊園がオープンしていることが予想されます。

首都圏で現在も民営霊園が急増する背景としては、広大な土地の確保などさまざまな問題で大型霊園の開発が困難になったこと、前述したように都心にお墓を求める消費者のニーズを反映して、住宅街に近い土地に墓所区画数が数百から1,000前後といった、中小規模の霊園が多くなっていることなどが考えられます。

しかし、一向に上向かない景気動向を反映してか、開園と同時に一気にお墓が売れるという霊園は少ないようです。はっきりと墓所の販売に苦戦している霊園も見受けられます。本誌では新しい霊園がオープンすると、記者が取材のために現地へ赴き、霊園の販売担当者や見学者の方にお話を伺うのですが、「アクセスが不便」「管理が行き届いていない」など、販売が不調な霊園はそれぞれに事情を抱えていました。昨年秋にオープンした東京都内のある霊園は、周辺住民による反対運動の煽りも受け、開園2ヶ月でわずか30区画の墓所を販売するに留まっていました。墓所の販売が予定通りに進まない霊園は、墓地を維持運営していくのに十分な費用を調達することができず、将来の管理体制に不安をきたすことも考えられるので、注意が必要です。

ただ、霊園が増えることは決して悪いことではありません。その土地でお墓を購入しようとする消費者にとって選択肢が増えますし、商圏が重なる霊園の間で競争原理が働いて、墓所や墓石の価格を抑えて販売されることが多いからです。その点ではこれからお墓を建てようと考えている方にとっては、満足できる建墓のチャンスと言えるでしょう。

・チェックするのは価格面だけではない

前項で霊園の管理体制について少し触れましたが、それがしっかりしているかどうかは霊園を選ぶ時にはとても重要な要素となります。霊園では管理者が定期的に清掃や見回りを行ないます。墓地の使用者が頻繁に訪れることの少ない霊園では、こうした管理によってお墓の環境を維持しなければなりません。

そのため、霊園を見学した際は墓地の管理体制を確かめるため、園内の掃除が行き届いているか、桶や柄杓などの備品は整理整頓されているかといった、すぐに目につくところをチェックします。最近では園内に植栽を豊かに配している霊園も多くなっていますが、そうした場所では植栽や生垣が病気になっていないか、草花が枯れたりしていないかを確認します。管理体制がしっかりしている霊園であれば、専門のスタッフがこまめに植栽を剪定し、花の植え替えを行なっているはずです。

さらに、年忌法要などを自宅で行なう家庭は少なくなっているので、そうした部分でも霊園の世話になることが多くなるはずです。法要を執り行なう場合、法要のための施設が必要になります。霊園によって法要室の広さや祭壇の造作はまちまちなので、それが自分の望むものであるかどうかを確認します。特に法要室の広さに関しては、十人程度で満員になってしまう小さなものから、百人以上の収容が可能なものまで霊園によってばらつきがあるので、注意が必要です。

その他にも、墓参者のための送迎バスはあるか、お墓参りに必要な物がそろえられた売店はあるのか、墓域内や管理棟の設計はバリアフリー対応となっているのかなど、管理体制について確かめておくべきポイントはたくさんあります。管理棟もなく、スタッフも常駐していない霊園では、安心して墓所の管理を任せることはできません。お墓は代々承継していくものですから、将来に亘って管理体制に信頼が置けるかどうかも確認する必要があります。

・洋型墓石の増加と中国産加工石材

霊園見学をされた経験のある方ならご存知のように、現在首都圏の霊園で建立されるお墓は洋型墓石が主流となっています。

伝統的な和型墓石と現在主流となっている洋型墓石洋型墓石の建立が増えた原因は大きく二つあります。ひとつはお墓に個性的なデザインを求める建墓者の意識の変化です。時代を経るとともに、伝統的なお墓の形である和型墓石が没個性であると感じられるようになり、デザインの自由度の高い洋型墓石が求められるようになったのです。墓石加工のための工業用カッターに取り付ける人造ダイヤの発明に伴い、石材加工機器の性能が飛躍的に発達したことも寄与しています。機器と技術が向上して、球体や曲面などの複雑な加工を施すことが可能になり、より凝ったデザインのお墓が実現しました。

もうひとつは、お墓の小型・低額化の進行の影響です。和型墓石に比べて使用する石が少なくて済む洋型墓石は、お墓の総額の抑制に大きく貢献しました。それに小さい区画では和型墓石は映えないので、その点でも洋型墓石の登場は歓迎されたのです。

そして、現在お墓に使用される石材は、そのほとんどが中国やインドなどの外国産石材で、それらは中国で加工されてから日本へと輸入されています。霊園ブーム以前は国産の石材でお墓を建立することが当たり前でしたが、増大する墓石需要に対して業態の小規模な日本の採石場だけでは墓石の供給が追いつかなくなり、まだ人件費が安かった韓国に原石の供給と加工の一部がシフトした時代がありました。ところがソウルオリンピックを経て韓国が先進国の仲間入りを果たすと、採石規制や人件費の高騰もあっ て採算が合わなくなり、コストの圧縮と原石を求めて、加工と採石の基地は中国へと移行しました。そのため、今では国内の墓石の大半が中国で加工されているのです。

中国の加工技術の進歩は目覚しく、今では日本国内では非常に高価であった複雑な石の加工が、より手軽に行なえるようになっています。

・墓碑に刻む文字も変化

お墓の形が和型から洋型に変わるとともに、墓碑に刻む文字も変化していきました。それまでの「○○家之墓」といった文字に代わって、「愛」「絆」「ありがとう」など自由なメッセージを刻むお墓が増えてきたのです。これは墓碑の文字も全体のデザインの一環としてとらえる意識の高まりと、核家族化による二家墓(両家合祀墓)の増加の影響が大きいでしょう。墓碑の文字を「○○家之墓」としてしまうと、その一家の人間しかお墓に入ることができませんが、メッセージを刻めば○○家以外の故人の遺骨を 納めることにも抵抗が少なくなります。

・デザイン墓石の登場

小社発行の『魅力的な小型墓石写真集 優美墓』には1.0~2.0㎡を中心に、優れたデザイン墓石が多数オーソドックスなスタイルだった洋型墓石のフォルムや色のバラエティーの豊かさが顕著になってきたのは、今から10年ほど前からではないかと思われます。お墓に故人への想いを、それが生前墓であれば自分がこの世に生きた証を、より個性的な形で表現したいという建墓者の気持ちに、前項で述べた石材加工技術の進歩という要素が加わり、さまざまな意匠を凝らしたお墓が各地の霊園で見られるようになりました。

この現象もやはり墓石の小型化・低額化と関わりがあります。オリジナルデザイン墓石の建立は、既成の形の墓石を建てるよりも当然値が張ります。まず施主と石材店が時間を掛けて打ち合わせをし、専任のデザイナーがデザインを起こさなければなりません。墓石の加工は複雑になり、墓石によっては色の異なる複数の種類の石材を組み合わせて作る場合もあります。石目や風合いを重視して、高価な石材を使用しなければならないケースも多いでしょう。

デザイン墓石が多く見られるようになった頃は、ちょうど墓石業界にバブル景気終焉による不景気の波が本格的に押し寄せてきた時期と重なります。墓石の販売数と購入費単価の落ち込みをなんとかカバーしたいと考えた石材店が、単価のアップが望めるデザイン墓石に本格的に力を入れ始めたのです。それまで一部の石材店しか手掛けていなかったデザイン墓石を、多くの石材店が受注し始めたのでした。

しかしながら、もちろん石材店によってその技量に差異があります。そのため、石材店選びは慎重にしなければなりません。ひとつの霊園の中に入っている指定石材店の中には、高い建墓技術を有する石材店もあれば、施主の要望を実現する技術を持たないところもあります。石材店をよく吟味して選ばなかったために、思い通りのお墓を作れなかったと、トラブルになるケースも散見されます。次の項目では、そんな石材店選びの重要性について説明します。

・石材店選びの重要性

お墓を建てようとする時には、石材店からのアドバイスが欠かせません。お墓についての知識を豊富に持っているという人は稀なので、霊園のこと、宗教のこと、お墓に使用する石材のこと、そしてデザインのことなど、建墓に関するあらゆる部分で石材店のサポートを受けるわけです。

そこで注意しなければならないのは、民営霊園や寺院墓地ではお墓の施工を請け負う石材店があらかじめ指定されており、その中からしか業者を選ぶことができないということです(これを指定石材店制度と言います)。

お墓は高価な買い物で、末永く承継するものです。そして、お墓はどの石材店で建てても同じというものではなく、単純に価格面で比較できるものでもありません。アフターケアをどれくらいしっかり行なってくれるかというのも重要です。後々のことまで安心して任せることのできる信頼に足る良い石材店を選ぶことが、満足できる建墓のための近道であると言えます。

では、良い石材店の条件とはどんなものでしょうか。石材店の仕事は「お墓を建てるまで」ではなく、お墓を建立した後もお付き合いが続きます。そのため、石材店には何より永続性が求められます。永続性がある石材店というのは長年に亘る信用と実績がある企業のことです。数多くの建墓実績がある石材店は、それだけ信頼に足ると言えるでしょう。長くその地域に定着している石材店は、それだけ施主の信頼に見合うだけの仕事をしてきたということだからです。

・増加するトラブル

霊園数が増加したことや購入費の単価が下落したことによって業者間の競争が激しくなり、強引なセールスをかける一部の悪質な石材店によって、消費者がトラブルに巻き込まれるケースが増加しています。消費生活センターに寄せられる相談も、年々増えているといいます。

主な事例としては、請求金額が見積書に比べて高額である、工事代金を前払いしたのに工事が完了しない、約束したものより質の劣る石材を使用された、といったことが挙げられます。お墓はやり直しのきかない買い物ですから、このようなトラブルに巻き込まれてしまっては泣くに泣けません。こうしたことにならないためにも、石材店選びは慎重に検討するべきです。

  • 石材店として、長年の歴史と実績がある
  • 会社の後継者が育っていて、企業としての永続性に問題がない
  • 社員の身だしなみ、接客態度、言葉遣いなどがしっかりしている
  • お墓に関する施主の要望をじっくりと聞いて、親身になって相談に乗ってくれる
  • 「見積書」「完成図面」「各種契約書」を提示し、施主に検討の時間を与えてくれる
  • 契約の締結や代金の支払いを急がせない
  • お墓に使用する石材の産地・品質・価格などについて、詳しく説明してくれる
  • 建立後のアフターサービスについて、契約書に明記されている

・お墓の引っ越し

改葬の手続きの一般的な流れいまや我が国の高齢化率(65歳以上の高齢者が総人口に占める割合)は20%を超え、単身世帯と核家族世帯の合計が全世帯に占める割合は85%という高い数字を示しています。こうした社会情勢の変化に合わせ、故郷にある先祖代々のお墓を自宅に近い民営霊園や寺院墓地に改葬する人が増えています。霊園ブームの頃に郊外の霊園に墓所を購入した建墓者が、高齢となって都心にお墓を移す例も散見されます。遠く離れていたり、交通アクセスの悪い場所では年を取ってからお参りに行くのが難しくなってしまいます。世話をしてくれる人がいなくなったお墓を放っておけず、身近な場所に置いておきたいと考えるのは当然のことでしょう。

改葬を行なうには、まずお墓(遺骨)を移転させる場所を決めて、墓地の管理者から「受入証明書」を発行してもらいます。次に、遺骨が埋葬されている墓地の管理者からは「埋葬証明書」を発行してもらいます。その後、それらの証明書を持って、移転元の墓地が所属する市区町村の役場に「改葬届」を提出し、「改葬許可証」を受け取ります。移転元の墓地に「改葬許可証」を提示して遺骨を取り出し、移転先の墓地へと移し、魂入れのための開眼法要を行ないます。表-4にそうした手順を分かりやすく示しましたので、参考にしてください。

・事前によく説明を

改葬を行なう際には後でトラブルにならないよう、移転元の墓地にそのことを事前に話しておくことが大切です。そこが寺院の墓地であれば、住職に改葬の意図をよく説明しておきましょう。それというのは、お墓が出て行くということは、寺院にとっては檀家が離れて行ってしまうということだからです。寺院にとってそれは当然痛手ですから、トラブルにならないよう早い段階で住職に直接会って、意を尽くして理解を求めた方が良いでしょう。寺院との関係がこじれた挙句、離檀料という名目でお金を請求さ れたというケースも稀にあります。しかしながら、長年世話になった住職であれば、檀家を離れる時には気持ちとしていくらかのお布施を包むことは当然の礼儀でしょう。

改葬に当たって墓所の使用者には、移転元の墓所から墓石や外柵を撤去して、原状回復させる義務が生じます。墓所の大きさにもよりますが、おそらく墓石の撤去費等で相応の出費となるはずです。改葬を検討する際は、新しく建立するお墓の購入費に加えて、移転元のケアに要する費用も必要になることをよく考えておかなければなりません。

以上、最新の霊園事情と消費者および業界の動向について述べてきました。読者のみなさまにもお墓・霊園の現在、そして、石材店選びの重要性などがご理解いただけたのではないかと思います。

我が国は大きく発展する時代を終えて、経済や人口推移などの面で、風船のように萎みゆく時代へと移行しています。かつて民間による霊園開発が始まった時代には墓地不足の問題が大きく取り上げられ、お墓を求める人々は競って郊外に造成された霊園に墓所を購入しました。その後時代は変わり、現在は地域によっては供給過多で墓余りとも言われる状況を生むに至っています。

これまで概観してきたように、現在首都圏における建墓総数は漸減傾向で、個々の建墓費用は下落し、墓所の区画面積は小型化しています。その一方で、霊園数は増加しており、霊園および石材店は建墓率(実際に建立された墓の基数を区画数で除した数字)を上げるために必死になっています。そうした中で、悪質な石材店によるトラブルの問題も発生しています。

ひと昔前と比べて、お墓に対する消費者の価値観は多様化・細分化しています。永代供養墓や納骨堂など、霊園への建墓以外の選択肢も多くなっています。これからはどこまで消費者のニーズを汲み取り、顧客本位のサービスを展開できるかという点に、霊園や石材店の生き残りがかかっていると言えるでしょう。

納得できる建墓を実現するために……そして、建墓を考えているみなさまは霊園や石材店について、チラシに掲載された価格の多寡といった表面的な部分だけにとらわれず、もっと多角的に検討し、結論を出されることをおすすめします。情報が溢れている時代ですが、お墓に関することとなると途端に少なくなるのが現実です。本誌に掲載された情報を、ぜひとも有効にご活用ください。霊園や石材店探しでアドバイスを必要とされる方は、お気軽に本誌編集部までご連絡ください。

昨年3月、東北地方を未曾有の大震災と津波が襲い、大勢の人々の命が失われました。あれからもうすぐ一年が経ちます。おそらく、今年の春の彼岸ほど、多くの日本人が亡き人々の鎮魂を祈り、家族や社会の幸福を祈ることはないでしょう。

お墓を建てて先祖や故人を供養することは、みなさまの心に平穏を与え、お墓参りは精神を浄化させてくれます。生前の建墓であれば、お墓は今生きている家族との絆を一層強いものにしてくれるでしょう。苦難が続くこんな時代だからこそ、気持ちの拠り所としてのお墓が最も必要とされているのではないでしょうか。

読者のみなさまの建墓が、心から満足できるものとなることを願ってやみません。


良い建墓は、良い石材店選びから ~失敗しないお墓の建て方~ >>>

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